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東京地方裁判所 昭和40年(ワ)9373号 判決 1968年7月18日

原告 国土計画株式会社

右代表者代表取締役 堤義明

右訴訟代理人弁護士 中島忠三郎

同 市川照己

同 遠藤和夫

同 丸山一夫

同 辻本年男

被告 玉那覇加栄

主文

被告は、原告に対し、別紙物件目録記載の土地につき被告のためになされた東京法務局昭和四〇年三月二二日受付第五、〇〇六号同日付贈与を原因とする所有権移転登記の抹消登記手続をせよ。

訴訟費用は、被告の負担とする。

事実

原告訴訟代理人は、主文同旨の判決を求め、請求原因として、原告は、昭和二二年五月一二日、訴外松井明之からその所有にかかる別紙物件目録記載の土地をこれをふくむ附近一帯の一九八三坪余を代金二〇万円で買い受け、その引渡もうけて、大部分の土地について所有権移転登記手続も了したが、本件土地は地目道路であり、かつ免租地であったため、東京都に上地する前提でその所有権移転手続が留保されていた。

しかるに、被告は、訴外松井明之から本件土地の所有権を譲り受けた事実がないのにかかわらず、昭和四〇年三月一二日、本件土地につき同訴外人から贈与によりその所有権を譲り受けたものとして同年同月二二日附で所有権移転登記を経由している。

よって、原告は、松井に対し所有権移転登記請求権を有するものであるから、その請求権を保全するため、被告に対し、民法第四二三条により、松井に代位し、あるいは、原告の有する本件土地所有権に基いて本件登記の抹消登記手続を求める。

また、被告が、同訴外人から本件土地を有効に譲り受けたものとしても、それは、被告が、その譲り受け当時、本件土地の所有権がすでに原告にあることを熟知しておりながら、たまたま本件土地の登記が、前述の上地予定のため売主の同訴外人名義にとどまっていることを奇貨とし、同訴外人に対し、本件土地を東京都に上地のためといつわって、登記移転に必要とする書類に捺印をうけ、これを冒用して被告の所有名義とする前記登記を経由したものであるから、被告は、背信的悪意者として、登記の欠缺を主張することが許されないものというべく、原告は、登記なくして、被告に対し、その所有権を対抗できるので、直接その所有権に基いて本件登記の抹消手続を求める。

と述べ(た。)立証≪省略≫

被告は、原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする、との判決を求め、答弁として、原告主張の請求原因事実中、本件土地について原告主張通り前主の松井明之から被告に対する所有権移転の登記の存在することを認めるが、その余の原告主張を否認する。

右の松井明之からの所有権移転登記は適法有効になされたものである。

本件土地は、私道のままでは水道敷設ができないため都道に申請するべく上地する目的で昭和四〇年二月頃松井より贈与を受けたものである。と述べ(た。)立証≪省略≫

理由

≪証拠省略≫によれば、原告が、昭和二二年五月一二日、当時本件土地の所有者であった訴外松井明之から本件土地を買い受けたことが認められる。そして、≪証拠省略≫によれば、訴外松井明之は、昭和四〇年二月頃、被告から、本件土地の地目が私道である限り都の水道敷設を求めることが容易でなく、これを都に上地して都道となれば、都の上下水道が敷設せられ沿道の分譲宅地に居住する人達の便益が大きいと説明せられたので、同土地がすでに原告に譲渡されながら、私道として免租地であるので登記上同訴外人名義にとどまっているも、いずれ東京都に上地することが当時原告との間で了解されていたうえ、昭和三八年には居住者からも右上地手続をすることを求められたいきさつもあったので、被告において右上地手続を代行するものと速断し、本件土地を上地するために必要な被告から提出された書類に捺印してこれらを被告に対し送付したこと。被告は、訴外松井において本件土地をすでに原告に対し売渡したが、その登記移転手続が未了であること、しかも原告もその上地手続をとらんとしていることを推知しておりながら、被告において右の上地手続を直ちにとるものと訴外松井を誤信せしめ、右上地に便宜なように同訴外人から昭和四〇年三月一二日贈与名義で本件土地所有権の移転をうけ、同年同月二二日あえてその旨の登記を経由したこと、当時訴外松井明之家の執事井上正誉が右事務を担当していたが、井上正誉にも訴外松井明之にも本件土地を被告に実質的に贈与する意向はなかったことが認められ右認定に反する被告本人の供述部分は信用できず、他に右認定をくつがえすに足りる証拠はない。

そうすると、被告は、訴外松井から本件土地所有権とその登記移転の意思表示を詐取したものというべく、しかも、本件土地がすでに原告に譲渡せられていて、その移転登記手続が未了であるが原告においても右上地手続をとらんとしていたことも推知していたのであるから、被告は詐欺行為によって原告の登記の申請を妨げた第三者に該当する。従って、被告は原告に対しその登記の欠缺を主張することができず、原告は本件土地についてその登記なくして被告に対しその所有権を主張することができるものと認めるのを相当とし、原告がその所有権に基いて被告に対しその所有権取得登記の抹消を求める本件請求は、原告の他の請求原因について判断をすすめるまでもなく、理由あるものというべく、これを正当として、認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 西岡悌次)

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